1度目は子供の頃

伯父の火葬で父と煙突から伸びる煙を眺めていた時

茶色い小さな蝶がヒラヒラ近付いてきて

2人で何気なくそれをただ見ていた

 

すると父が言った

「昔、俺の兄貴が死んだ時も黄色い蝶が来たんだよ…」

「じゃあ、この蝶々は◯◯おじちゃんかもね…」

 

私達はその蝶を伯父だと確信した

 

なぜならそう話してた最中に黄色い蝶が茶色い蝶に近付いて

二匹で交わり合いながらそのまま一緒に飛び立って行ったからだ

 

普通に考えて

父の兄はこの15年前に亡くなっていたし

そんなお伽話のような事はあり得ないと思う

たまたま

それを私と父が見ただけだ

だけど、私と父は安心したのだ

2人とも兄弟の中で父が特に大事にしていた兄弟だった

その尊敬する兄がずっと気にかけていた弟を迎えに来てくれた

 

そう思える光景を

父が「見た」のだ

 

「良かったね、迎えに来てくれたよ」

「そうだな…これで安心したわ」

 

2度目は父の葬儀を終えて、ふと庭に目を向けた時

黒い揚羽蝶がそこにいた

 

あぁ、お父さんは黒い蝶になったんだな…

 

蝶は父が好きだった家の庭を長いこと舞った後

それは来た

本当に来たのだ

迎えに来たのだ

黄色い蝶が黒い蝶に近付き

交わりこそしなかったが、まるで導かれるように二匹はその場を離れて行ったのだ

 

蝶は昔から死者の生まれ変わりという

 

私は安心した

父はとても寂しがり屋で母が逝くまで我慢すると思うと心配したが、父の大好きな兄弟と祖父母の元ならきっと寂しくはないだろう

 

むしろ

幸せに暮らしてくれるに違いない

 

母が父の元に逝くにはだいぶ時間が掛かるだろうから、それまでは子供の頃のように幸せに待てればいい

 

死は終わりではない