「斜陽」

雲の上から小便

戦争。日本の戦争はヤケクソだ。
ヤケクソに巻き込まれて死ぬのは、いや。いっそひとりで死にたいわい。

人間は、嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。この頃の指導者たちの、あの、まじめさ。ぷ!

人から尊敬されようと思わぬ人たちと遊ぶたい。
けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。

とにかくね、生きているのだからね、インチキをやっているに違いないのさ。

「ずいぶん、お酒を召し上がりますのね。毎晩ですの?」
「そう、毎日。朝からだ。」
「おいしいの?お酒が。」
「まずいよ。」

「しくじった。惚れちゃった。」

姉さん。
だめだ。さきに行くよ。
僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、それが全然わからないのです。
生きていたい人だけは、生きるがよい。
人間には生きる権利があると同様に、死ぬる権利もある筈です。

姉さん。
僕には、希望の地盤が無いんです。さようなら。
結局、僕の死は自然死です。人は思想だけでは死ねるものでは無いんですから。
それから、一つ、とてもてれくさいお願いがあります。ママのかたみの麻の着物。あの着物を、僕の棺に入れて下さい。僕、着たかったんです。
夜が明けて来ました。永いこと苦労をおかけしました。
さようなら。
ゆうべのお酒の酔いは、すっかり醒めています。僕は素面で死ぬんです。
もういちど、さようなら。
姉さん。
僕は貴族です。